2011年12月31日土曜日

「ウェブ上の旅行情報をまとめて横断検索できる検索サイト」uptake

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■どういった問題を解決しようとしているのか

旅行の情報をウェブ上で検索する人は多い。ウェブ上の旅行情報は非常に多い。様々な旅行情報サイトがあり、様々なレコメンドやレビューが存在する。あまりの情報量に結局どこがよいのかわからなくなってしまうことも多い。comScore.comによると、旅行を計画する人は平均的に12の旅行に関する検索を行い、22のウェブサイトを閲覧、計画を始めてから購入に至るまで29日もかかるそうだ。

旅行者は、旅行を計画する前からある程度、どのような旅行か決まっていることも多い。例えば、家族旅行であればどこ行くかを決める前に「家族で楽しめる場所」という前提条件がつく。ならば、始めから「家族で楽しめる場所」の情報のみを効率良く見たい。

■どのようなサービスなのか

uptakeは、世の中の有名な旅行情報サイトから情報を取得し、統合した旅行情報総合検索サイトである。情報の取得元はYahoo Travel, Trip Advisorを含む1000以上のサイトから40万以上のホテルやアクティビティ情報を取得している。

これらの情報をセマンティック分析し、ユーザが知りたい情報に効率良くたどり着けるような検索エンジンを提供している。

例えば、ラスべガスに家族で行くとしよう。「家族で楽しめる」場所のランキングが欲しいところだ。uptakeでは、このようなあるテーマやアトラクションタイプを検索条件にして、その検索条件の中でのランキングを表示することができる。

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具体的なレビュー情報は、リンク先のそれぞれのオリジナルソースのサイト(Yahoo TravelやTrip Advisorなど)で見るようになっている。

上記のようなアトラクション情報だけでなく、ホテルやレストランについても同じようにランキングされており、このサイト1つで旅行に関する全ての情報を取得できる。

また、uptakeは今年ソーシャルQ&A機能をリリースしている。Google Map上の旅行したい場所をクリックすると、その場所に住む自分のFacebookでの友達が表示され、その友達にQ&Aを送信できるというものだ。他のユーザが過去に行ったQ&A情報も一覧として表示される。

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旅行する先に友達がいる場合なんて少ない気もするが、もしいた場合は確かに色々聞きたいとは思うかも。

なお、uptakeは、基本検索エンジンなので収益は恐らく広告収入のみと思われる。

■サービス/会社情報

USA
創業 2008
従業員 ?
月間ユニークビジター数 993,085
月間ユニークビジター増加率(昨年比) 11%
投資状況 2008/09 : $10M(Series B)
投資総額 $14M
(* CrunchBaseより取得)

■デモグラフィクス

* 上記は、全インターネットユーザの平均値に比べ本サービスのユーザ層がどのくらい偏っているかを示す。左にバーが伸びるほどユーザ層が平均に比べ少なく、右に伸びるほど多い事を示す。(Alexaより取得)

■市場について

旅行を計画するユーザが使う検索エンジンだが、あまりバッティングする既存サービスが思い浮かばない。結局このサイトで検索した後、Yahoo TravelやTrip Advisor, Expediaなどに飛ぶ訳で、彼らの競合ではないだろうし、検索エンジンで検索したからといって旅行計画が作られるわけではないので旅行代理店や旅行雑誌、旅行情報系サイトのユーザも減る訳ではない。

uptakeは、セマンティック分析を軸にした検索エンジンなので、ソーシャルネットワークのサービスにあるような登録ユーザの確保による競合優位性みたいなものがなく、競合優位性はブランド力とセマンティック分析の技術力になるのだろう。

時代は、なにかとソーシャルグラフであり、友達からのリコメンドを元にしたり自分の趣向を元にパーソナライズされた解析が流行る中、こういったセマンティック分析の検索エンジンがシェアを伸ばしてるということは案外まだまだこういう機械的な解析で新しいサービスを提供できる分野があるんじゃないかと思いました。

2011年12月30日金曜日

「オフラインでも見れる自分だけの旅行ガイドが作れる」tourist eye

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■どういった問題を解決しようとしているのか

海外旅行に行く際に必ず必要なのが現地を回るための地図や現地情報が載っているガイド本だろう。近年のモバイル端末の普及に伴い、この地図やガイド本もいずれインターネットサービスに置き換わってしかるべきだと思われる。もちろん今でもモバイル端末さえ持っていけば、現地でGoogle Mapを開き、現地情報が載ってるサイトを巡れるので何も問題はないはずだ。いや実は大きな問題があった。海外では自由にインターネットが使えないのだ。海外ローミングサービスは、非常に高くつく。中国に出張に行き、自由に携帯でメール打ってたら1ヶ月で10万円いっちゃいましたなんてざらに聞く話だ。じゃあ、旅行ガイドを電子書籍で買ってiPadとかで見るという案もあるが、やはりせっかくインターネットなのだ、自分用にパーソナライズされた旅行ガイドが欲しい。自分の行く場所、興味のある場所のみをピックアップしわかりやすく表示してほしいのだ。

■どのようなサービスなのか

tourist eyeは、旅行者にそれぞれ個人個人が計画した旅行の行程表(パーソナライズされたツアーガイド)を作成することができ、それをモバイル端末から見る事ができるサービスである。最大の特長は、一旦作ってしまったツアーガイドは旅行中、全てオフラインで参照可能だということだ。

まず、FacebookかTwitterアカウントでtourist eyeにログインする。そして、旅行の目的地を入力。すると自分のツアーガイドを作る画面に移る。

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上記のように1日目2日目と、タイムラインで行く場所をドラッグアンドドロップしていくだけ。すると、中央には自動的に目的地から目的地に行くための地図とその行き方が示される。それぞれの場所の詳細な情報も見る事ができる。

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登録されていない場所に行くならば、新規で作成することも可能。

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こうやって、どこからどこに行き、この町では、このレストランにいって、このホテルに泊まりみたいな行程表が簡単に作れる。

そして、これをモバイル端末にダウンロードすると、旅先でオフラインで参照できるということだ。

■サービス/企業情報

USA
創業 2010/02
従業員 4
月間ユニークビジター数 443
月間ユニークビジター増加率(昨年比) 240%
投資状況 2010/02 : (Seed)
(* CrunchBaseより取得)

■市場について

tourist eyeは、サービスを開始したばかりであり、まだ明確なマネタイズプランはないように見える。旅行業界に位置するサービスであることには間違いないが、どのあたりからお金を頂くのかは今後決めていくのだと思われる。tourist eyeのサイトによると最終的には世界のあらゆる旅行情報をサイトに登録し、旅行代理店やツアー会社にこのサービスをオファーしたいと書いてあった。

このサービスも1つ既存の旅行スタイルを変える可能性があるサービスだと感じました。

2011年12月29日木曜日

「チェックインするとポイントがたまるロイヤルティプログラム提供サービス」Top guest

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■どういった問題を解決しようとしているのか

ソーシャルネットワークサービスがウェブを席巻する中、企業はソーシャルネットワークを使ったマーケティングを積極的にやるようになってきている。Facebookでは頻繁に大企業が作った軽いゲームアプリがニュースフィードに乗っかってくるし(例えばついこないだNISSAN ドリームスクラッチが来てました)、Twitterでは企業のアカウントが日々PR情報をつぶやいている。

これらソーシャルネットワークを有効活用しなければいけないのは旅行関連業界(ホテル業界、航空業界)も同じである。彼らのお客さんは、旅行する人々なので、なんとかして旅行で使ってもらっていい評判やリコメンデーションをソーシャルネットワーク上で伝播してもらいたい。

旅行している人が、インターネット上に旅行に関することを載せる場合、例えばブログなどに旅日記の形で詳細に旅の内容を書くことが考えられる。だが、最近多いのはFacebookやTwitter上で「場所」と「写真」をのせて一言二言添えるだけの投稿だ。例えば、「〜ホテルのバルコニーからの夜景、すげえ」という文と共に夜景の写真とホテルの位置情報を貼ったつぶやきとか、「今からフランス行ってきます!」みたいな文と共に飛行機の写真を載せたりとか。こういったつぶやきや投稿は気軽に書けるし、また気軽に「いいね!」と言えるので伝播も早いに違いない。そしてこれは間違いなく威力のある広告なのだ。

このソーシャルネットワーク上に投稿される短い投稿に自分のホテルや飛行機を載せてもらうにはどうすればよいか?

■どのようなサービスなのか

Top guestは、位置情報を投稿するソーシャルサービスを使って、指定の場所で「チェックイン」すると、インセンティブプログラム(ポイントがたまったり、商品がもらえたり)を受けられるサービスだ。

インセンティブプログラムの中には、例えばヒルトン系列のホテルで使えるポイントがたまるHilton HHonorsや、Virgin America航空のマイルがたまるVirgin America Elevateなど10種類が用意されている。それぞれのインセンティブプログラムに申し込んだら、FacebookかFoursquare, Twitter, Instagramのいずれかで指定の場所にチェックインする。これでポイントがたまっていくのだ。

チェックインすべき指定の場所とは例えばどんなとこがあるのかというと、なんと日本にもあるじゃないか。

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企業側としても少ない出費(ポイントの支出)でInstagramの写真付きでばずってもらえたりすれば、十分な元が取れるということなのだろう。

■サービス/会社情報

USA
創業 2010/06
従業員 5
月間ユニークビジター数 1,662
月間ユニークビジター増加率(昨年比) -81%
投資状況 2010/11 : $2M(Series A)
投資総額
(* CrunchBaseより取得)

VentureBeatの記事にある通り、Top guestは、2011/12月にezRez Softwareに買収された。サービスローンチからわずか18ヶ月という異例の早さでのExitで投資家たちもウマウマだったんじゃなかろうか。

■市場について

オンラインでロイヤルティプログラムを提供するサービスは最近アメリカでがんがんでてきている。デジタルロイヤルティカード(例えば10個ドリンク買ったら1個ただになるカードとか)をモバイルアプリとして提供するPunchdというスタートアップは、2011年(何月かちょっとわからなかった)に始まって2011年7月にはGoogleに買収されちゃうというすごい速さでゴールしちゃってるし、CrowdTwistも2011/9月に$600万ドルの資金調達に成功している。

そんな中Top guestは、位置情報アプリを使ったロイヤルティプログラムの提供に特化してExitを勝ち取った。同じようなことはこのTop guestが使うアプリであるFoursquareもやっている。Foursquareという大きなネームバリューを持つサービスが存在するにも関わらず競合としてうまくExitまで持っていけたのは、Foursquareがちんたらしてるのか、Foursquareが市場を取りきれないほどに市場が広いのか、それともTop guestがうまく売り抜けただけなのか、興味深いところだ。

新しいサービスを考えるとき、位置情報アプリは、Facebook, TwitterにFoursquareと並びこれに対抗するサービスを作るのは厳しい。だが、Top guestのようなサービスならば日本でもまだまだサービス展開の余地があるのではと思う。特に日本のホテルや旅館、及び飲食店などローカルなお客は、海外のサービスが手を出しづらいはずだ。先に提携先を固めてしまえばいいサービスができそうな気がする。

 

 

2011年12月28日水曜日

「インターネット上の旅行情報を元に旅行プランを作ってくれるサービス」mygola

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■どういった問題を解決しようとしているのか

自分で全ての旅行を計画したり、航空機のチケット以外は行き当たりばったりで旅行できる少数の人を除いて、多くの人々は旅行の際に旅行代理店を使う。旅行代理店は、旅行者が行きたい場所に基づいてパッケージプランを選んでくれ、旅行者は航空機のチケットや泊まる先、観光に必要な交通手段などを気にする事なく、場合によってはガイド付きの観光を楽しめる。

しかし、旅行代理店は本当に必要なのだろうか?旅行代理店は必ずしも旅行者のことを考え細かなプランを練ってくれるわけではない。当たり前だがパッケージとして売る以上、個人個人に合わせるわけでなくある程度画一的な旅行になってしまうのは仕方がない。また、パッケージとしてある程度のボリュームで予約をするため安い料金でいける場合もあるが旅行代理店として利益を出す以上、ある程度マージンを取った料金設定にならざるを得ない。本当はもっと安く旅行できるのではないか?

インターネットが発達した現在、旅行情報はネット上に豊富に存在する。旅行代理店だからわかる情報というのは少なくなってきているはずで、逆に旅行代理店はこのネット上にある最新の実体験に基づく様々な情報を収集した上で旅行者にプランを提案できているのだろうか?

またこの問いかけは、日本でいう「るるぶ」や「まっぷる」といった旅行雑誌にも投げかけられる。僕の個人的な体験でもタイに行った際にその年の最新のるるぶに載っていた食べ物街が丸ごと更地になってることがあってびっくりしたことがある。彼らは最新の情報を反映した旅行情報をどこまで旅行者に提案できているだろうか?

■どのようなサービスなのか

mygolaは、旅行を予定している人が行きたい場所、したいことを投稿すると、それに対しインターネット上のあらゆる旅行情報を元にスタッフがオススメのプランを出してくれるサービスである。

まずユーザは、TwitterかFacebookアカウントでログインする。

ログイン後にユーザページに行き、そこから自分が旅行予定の場所について質問を投稿する事ができる。

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なにげに日本語が対応しててびっくり。日本語で質問したら対応できるんかいな。

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質問内容はタグ形式で選ぶ形になる。で、質問に答えると最後にそれを質問文にしてくれる。なお、質問に対しては24時間以内に回答をしてくれるそうだ。また、チケットの手配・予約なども代行してくれるとのこと。

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また、過去に他の人が質問し、それに対してスタッフが答えた内容も閲覧できる。回答のクオリティは高く、普通に旅行したくなる。例えば、日本旅行をした人への回答はこんな感じ。

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浅草。きれいな写真。

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やはり相撲ははずせないと。

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ショッピングは原宿で。

このような写真が7、8枚と共に詳しい解説が出ている。写真の右下にSourceというリンクがついてることでわかるように、これらの写真は全てインターネット上にある情報を集めてきている。回答の中の解説は恐らくスタッフが書いたものだが、これもまたインターネット上の情報からまとめたものだと思われる。

また、このサービスの最大の特長は「バイアスのかかっていない情報」だということだ。あらゆる旅行雑誌やパッケージ旅行は、何らかのバイアスがかかっていることは想像に難くない。例えば海外ツアーの観光バスが必ず立ち寄るお土産屋さんは当然その地域で一番安いからでも良いものを売ってるからでもなく、旅行会社にペイバックがあるからだろう。mygolaのスタッフは、インターネット上の純粋な旅行者のブログや中立の立場にたつサイトからのみ情報を集めている(とサイトに書いてある)。

料金体系は、最初の1つ目の質問は無料(正確にはpay us any amount)。$30払うと、1回の旅行に関して何度質問しても良い。また、$99払うと、1年間旅行回数に関わらず何回でも質問してもよい。

■サービス/企業データ

USA
創業 2009/10
従業員 ?
月間ユニークビジター数 2,580
月間ユニークビジター増加率(昨年比) 1463%
投資状況 2011/12 : $1M(Seed)
投資総額 $1.16M
(* CrunchBaseより取得)

2011/11月の月間ユニークビジター数は、2580人と少ないながら、12月に100万ドルの投資を受けている。投資元は500 StartupsやBlumberg Capitalと有名どころなのでそれだけ将来性があるということなのだろう。

■デモグラフィクス

* 上記は、全インターネットユーザの平均値に比べ本サービスのユーザ層がどのくらい偏っているかを示す。左にバーが伸びるほどユーザ層が平均に比べ少なく、右に伸びるほど多い事を示す。(Alexaより取得)

ユーザは、20代30代が主要ユーザで、女性が多いようだ。そして、みんなあいかわらず仕事さぼって。。。

■市場について

このサービスの市場は大きく捉えると「旅行者の旅行を助ける業界」に入るので旅行代理店やるるぶなどの旅行雑誌、旅行情報関連のウェブサイトなどの既存プレイヤーと競合する市場になるだろう。しかし、僕は恐らく旅行代理店の顧客が大きくこのサービスに移ることはないと思っている。

パッケージ旅行の魅力は旅行スケジュールを含めて何もかも全てを決めてもらえることの他に、例えば海外旅行などで何か不測の事態があった場合に対応してもらえるという安心感がある。以前ベトナムでパスポートをなくした友達が現地で旅行代理店の方に手取り足取りお手伝いしてもらった話を聞いたりすると、やはりパッケージ旅行の需要はなくなることはないと思える。

本サービスは、このような客より、「るるぶ」を片手に自由に旅行するような人々にこそ使われるべきものだろう。恐らくその手に持っている「るるぶ」がiPadになりその画面にあるのがこのサービスになるのだ。画一的に作られた旅行雑誌より、自分にあった場所を最新の情報に基づいて紹介してくれ、疑問があれば都度都度回答をしてくれる情報源のほうが役に立つのは明らかだ。

今の世界のサービスの流れは「インタラクティブ化」である。SNSに始まりあらゆるサービスで一方的な情報の伝達から相互に情報がやり取りされるような形に置き換わってきている。このサービスは、旅行雑誌や旅行情報サイトのインタラクティブ化を実現するサービスだと思う。

2011年12月27日火曜日

「無料で様々な専門医に相談ができる」Health Tap

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■どういった問題を解決しようとしているのか

つい最近まで病気になった時にできることは、病院に行きお医者さんに診療してもらい、そのお医者さんの言う通りに治療を受けること以外になかった。しかしインターネットが進むにつれ、病気の情報やその病気をどのように治すべきかといった情報が簡単に手に入るようになり病院の医者以外からの情報源が増えつつある。

しかし、我々はインターネットの病気や健康に関する情報を信用しているのかというと、実はそれほど信用していない(インターネットユーザの半数以上がオンラインの情報が何も役に立たないと感じている調査結果がここに)。やはり、信頼できる医者や専門家に相談した結果得られる情報こそ信用できるものであるというのが大半の人のコンセンサスではないだろうか。

自分の体に異変を感じたらすぐに医者に相談したいし、大事の病気であればできれば複数の医者からオピニオンをもらいたい。しかし病院にわざわざ行き、1つの病院で1人のある医者に見てもらうことしかできないのが大半の人の現実だ。

また、社会的にも今医療制度は問題が山積みの分野である。国民健康保険の国の負担は今後高齢化に伴い年々増加していく。しかしその負担に耐えれる税収入は今後見込めず、今後医療制度は国民の負担が増える形で推移していくことに間違いない。医者とのやり取りという従来の形以外に病気を治療したり、未然に防いだりする方法はないのだろうか。

■どのようなサービスなのか

Health Tapは、無料でサービスに登録された様々な専門の医者から意見を聞けるサービスだ。

まず、ユーザはサービスにサインアップすると簡単な質問をされる。

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質問に答え終わると、ユーザトップ画面に行く。この画面では、先ほど答えた自分の関心のある病気に関して、他のユーザと医者のやり取りがフィードされている。

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使い方は簡単で、ただテキストボックスに自分の健康に関する質問を書くだけ。書くとこれがHealth Tap上に登録され、医者からの返答が来る。もちろんこちらのユーザ情報は、ニックネーム以外公表されることはない。逆に医者のプロフィールは細かく見る事ができる。現在トップランクのお医者さんは15468の投稿をしていて、93人からありがとうと言われ、368のAgreeをもらってると。これはお医者さんにとってすごい宣伝にならないだろうか?

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思うに今まで病院を探すときその病院にいる医者の能力や評判を気にしていくことは一般的に少なかったと思う(もちろん重大な病気の場合は気にするのかもしれないが)。また、気にするとしてもちゃんとした評判を確認できるサービスはなかった。これは、患者にはもちろんだが医者側から見てもいいことではない。人間誰しもそうだがインセンティブがないことについては積極的に改善しようとしないものだ。評価が適切に広まらないシステムの中ではサービスの質は落ちて当然だと思う。多くの患者に適切なアドバイスを与えることができる医者が正当に評価され、患者が集まるというシステムができれば、それは患者にとっても医者にとってもwin-winなことだと思う。

■企業/サービスデータ

USA
創業 2010/07
従業員
月間ユニークビジター数 8,074
月間ユニークビジター増加率(昨年比) 936%
投資状況 2011/12 : $11.5M(Series A)
投資総額 $13.9M

 

2011/11までのユニークビジター数データは以下の通り。2010年7月ローンチと新しいサービスで、現在8000人を超えるUVを持っている。

Healthtap com uv 1y

■デモグラフィクス

* 上記は、全インターネットユーザの平均値に比べ本サービスのユーザ層がどのくらい偏っているかを示す。左にバーが伸びるほどユーザ層が平均に比べ少なく、右に伸びるほど多い事を示す。

他のヘルスケアサイトと大きく違う点が1つある。ユーザの年齢層として25-34歳が多いこと。45-65歳以上のユーザが少ない事。これは明らかに本当にこのサービスを必要とするユーザにリーチしていない。恐らくサービスがローンチして間もないためまだ一般のユーザよりスタートアップ界隈の人たちのアクセスが多いのではないかと思う。このグラフが下記のようなグラフになるとHealthTapが本当に機能してきていると実感できるようになるだろう。

(Healthlineのデモグラフィクス)

■ターゲット市場について

Health Tapは、大きく見ればヘルスケアのウェブサービス市場に属する事になる。ターゲットのユーザもメインは40-60代くらいの健康に悩みをもつようになる人々だ。この戦場には、古くから多くの競合がひしめきあっている。

健康情報に関する記事を集めるサイトはHealthlineやHealthCentralと月間ユニークビジター数で200万人を超えるモンスターサイトが多い。また以前紹介したDairy Strengthのように医者の相談を受ける機能を持っているサイトもある。そういう意味でHealth Tapはこの市場の再セグメント化をしようとしていると言える。

Forbsに「The new era of interactive health」という記事があった。時代は、モバイルの時代に入りソーシャルサービスの時代にパーソナライゼーションの時代に入った。以前は興味を示さなかった医者もウェブの世界に積極的に参加し始めている。今がまさに「インテラクティブな健康管理」を実現するときだと。

インテラクティブな健康管理とは具体的には以下のようなことだ。

・健康改善のためのモバイルアプリやウェブアプリが素早く簡単にいつでもどこでもアクセスできること。

・パーソナライゼーションツールが安全に、個人個人に合わせたすぐに使用可能な健康情報を提供すること。

・信頼のおける医者たちとその知識にオンライン、オフライン問わず24時間365日アクセス可能であること、そして毎日継続的なケアができること。

・患者が病気に対するインフォームドデシジョン(詳細を説明された上での決断)ができるように、患者が経験のある個人個人に合ったサポートグループとコミュニケーションできる基盤をインテラクティブテクノロジーが提供できること。

・シンプルなツールでゲームのようなインテラクションを提供することで人々が自分の健康の改善に関与し続けるよう促すこと。

Health Tapは、このインテラクティブな健康管理に焦点を絞り、強調することで大きく成長しようとしているサービスだと思う。

 

このベンチャー市場が熱い「イベントチケット販売サービス市場」その5

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■まとめ

4つに分けてやってみたイベントチケット販売サービス市場の調査。最後に、わかったことをまとめてみる。

1, 個人のイベント告知、チケット発行、管理サービスの需要は増加している

英語圏でのサービスは2003年頃から始まり比較的古くからあるサービスであるにも関わらず市場はまだ拡大していることがUVの集計からわかった。日本の市場は、アメリカの数年後追いなので、これから拡大していくと予想できる。

2. 英語圏の市場はトップランクのシェアを持っているベンチャーにとって既に十分な収益を上げれるほど大きい

英語圏の市場は、21億円市場だと推定できる。年間12%の増加を示している事から、ベンチャー企業にとってひとまずの収益を上げられる規模であり将来性も見込める市場である。

3. Facebookを始めとするSNSとの深い連携が成長の要因となる可能性

あくまで推測となるが、Eventbriteの成長は、SNSとの連携強化にあると思われる。

4. 市場をセグメント化しユーザを絞ったサービスが成長する

punchbowlは、パーティーに特化した機能を提供する事で他の競合に比べて大きな成長を達成した。ユーザを絞りそこに刺さる機能を提供する事で結果としてユーザ数を増やせるということ。

5. 日本は、イベントの告知に特化したサービスとイベント関連全ての機能を網羅したサービスがある。

日本は、告知、募集を簡単に行えることに重きをおく「こくちーず」「Twipla」といったサービスと、「ATND」のようなEventbrite的なサービスにシェアが分かれる。今後はどちらが流行っていくのかは楽しみだが、告知だけのサービスは、Facebookが今後色々な年代層に拡大していくと厳しくなるんじゃないかなと個人的に思ってる。

■反省

・イベントチケット販売サービス市場として、書き始めたがサービスを調べていくうちに市場の定義が曖昧になってどこに境界をひくといいのかわからなくなった。次は、サービスを先に調べ切ってから書き始めようと思う。

・データの収集に思ったより手間取った。次からはもうちょい慣れるはず。

・本当は、「イベントチケット販売サービス市場ってこんなんなんだーへー」で終わらないで、「お、これならこういうサービスすればもっとこの市場でうまくいくはずだ!」みたいな気付きが生まれる記事にしたいのだが、なかなかうまく行かない。今後の課題ということで。

2011年12月26日月曜日

このベンチャー市場が熱い「イベントチケット販売サービス市場」その4

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■競合のサービス状況(日本編)

さて、今度は日本のサービス勢力図を見てみる。

正直、日本のサービスについては、とても全ての競合を網羅できたとは思っていない。TechCrunchやVentureBeatといったスタートアップ企業のデータベースがある海外と違い、日本は検索エンジンを頼りに自力で探すしかないため、ほんとはこのサービスの大手がいるのに逃している可能性があるのは事前にお断りしておく。むしろ、こんなサービスもあるというのがあれば教えて下さいm(_ _)m

□こくちーず

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日本で個人がイベント募集をできるサービスでは一番大きいと思われるサービス。

主催者がイベントを告知、募集し、興味のあるユーザが登録申し込みをできる。決済機能はないようだ。正直「イベントチケット販売サービス市場」という捉え方は間違えてたな。。。

特長は、決まったフォーマットのテキストボックスに言われた事を入れていくだけでオシャレな告知ページを作成できることと、やはりユーザが多いことだろうか。前記事にも書いたが、このようなサービスは、ネットワーク効果でユーザが既に集まっているところに新しいユーザも集まる。ユーザがいないと全く価値がないサービスなのだ。

ユーザは、メールアドレスでユーザ登録を行い、イベントの告知/申し込みを行う。収益源は全て無料であるため恐らく広告収入のみではないだろうか。

検索エンジンで拾える他のユーザの評判を見ると、UIが非常にわかりやすく使いやすいという点と無料である点が評価されているようだ。

□ATND

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決済機能を持つイベント募集/管理サービスでは恐らく日本最大のサービス。Eventbrite日本版といったところ。

ATNDの操作方法は、nanapi Webに詳細があった。

http://nanapi.jp/web/atnd

参加者のイベント申し込み/事前支払い/キャンセル、イベント主催者のイベント告知に出席者管理まで必要な機能は一通り揃っている。ユーザ登録は、TwitterやGoogleアカウントなど8種類のIDで認証が可能。

□Twipla

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Twitterを使ったイベント告知が簡単にできるサービス。決済機能はない。

ATNDや英語圏で見てきたサービスとはかなり趣向が異なり、とにかく軽く集まろうというノリのイベント募集サービスである。Twitterのアカウントでログインし、最初の画面はいきなりイベント作成のページ。入力内容もシンプルで、「イベント内容」「場所」「日時」「参加定員」だけである。

登録されたイベントはTwitter上に流れるほか、Twipla上でも一覧で見る事ができる。

□Peatix

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今回、シリコンバレーに本拠地を移すとともに70万ドルの資金調達をしたPeaTixは、どちらかというとEventbrite, ATNDの流れをくむサービスである。

イベントの作成は、比較的簡単にできそうだ。

ちょっとわからなかったのは、既に登録されてるイベントの一覧がどこにも出てこないところ。Peatix上ではイベント告知、募集機能はなく、あくまで主催者のチケット発行と決済、出席者管理のためのサービスなのかもしれません。また、PCからTwitter認証でユーザ登録したのち、Androidのモバイル端末でアプリからログインしようとしたら、ユーザとパスワードを聞かれるのだが、パスワードなんて登録してないし、Twitterアカウントでは入れないしでよくわからなかった。んー、私の使い方が悪いのだと思うのですが。なんだろう。

まあ、TechCrunchのチケットを売買してるくらいだから間違いなくみんな使えてるはずなので、ちょい人に聞いてみようかな。

このベンチャー市場が熱い「イベントチケット販売サービス市場」その3

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■競合サービスの状況(英語圏編)

TechCrunchの記事「成功するスタートアップの13のモデル」に出てくるモデルのうち、イベントチケット販売サービスは"マーケットプレース"に当たると思われる。本記事によると、マーケットプレースは、ネットワーク効果(既存有名サイトへの集中)が大きく、1ユーザ当たりの料金も小額となるため、採算ラインにのせるまでに時間がかかる市場だ。収益要因は、「品目数」「出品料」「販売額」「コミッション額」となっているが、イベントチケット販売サービスの場合、「出品料」はどの企業も無料で、「コミッション額」は各企業によりそれほど大きく変わるものではなく、「品目数」と「販売額」はイベントの数とそれに参加するユーザの数に依存することとなる。

イベントの数とそれに参加するユーザの数は、結局どれだけイベント主催者と参加者をサイトに呼び込むかなので、それぞれの企業の規模は、ユニークユーザの数と比例すると考えて間違いない。そこで1ヶ月のユニークビジター数が10万を超える7社の勢力図を円グラフにしてみた。

英語圏のサービスはMeetup, Eventbrite, Eventful, punchbowlの4強と考えていいようだ。この4社についてもう少し掘り下げてみる。

□Meetup

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USA
創業 2002/01
従業員 75
ユニークビジター 2243598
ユニークビジター増加率 11%
投資状況 2008/07 : $7.5M(Series D)
投資合計額 $18.3M

Meetupは、知らない人同士がイベントを告知し参加するマッチングサイトとしては一番ユーザ数を誇るサイトである。

Meetupは、基本的に共通の趣味や目的を持つ人々がグループを形成し、そのグループの中でイベントを実施することができるサービスとなる。正確にはイベントではなくあくまで"Meet up"であり、オーガナイザーはいるものの参加する人全て平等であり、主催者が参加者に何かを与えるとか主催者が参加者を楽しませるという形をとらないことを特長としている。

グループを主催するユーザは、月額12ドル(6ヶ月払いの場合)をMeetupに支払う。それ以外の料金は発生しない。参加者はイベントが有料・無料に関わらずMeetup自体に支払う手数料はない。

チケットの販売手数料で収益を稼がない(恐らくチケットという概念はない)ため、Meetupは正確に言うとイベントチケット販売サービス市場ではないかもしれない。とはいえ、イベントを主催する人と参加したい人のマッチングサービスであり、ターゲットユーザという面では他のサービスともろ被っているためこの市場に含めて話すことにした。

UV(ユニークビジター数)を見てみる。サービス開始が2002年と古い。しかしそれでも毎年着実にユーザを伸ばしており、2011年11月の月間UV(ユニークビジター数)も去年の同年度に比べて11%の伸びとなっている。

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また、本サービスのデモグラフィクスを見ると、この市場に代表されるように女性比率が相当高い。Meetup CEOのインタビュー記事には「中小規模の、技術系ではないコミュニティには、Meetup.comは強力なブランド力を有している。」とあることを合わせると、Meetupは少なくともアメリカでは一般的なユーザに認知されており、仕事だけでなく趣味などが共通した友人との交流の場として使われていることが想像できる。

アメリカの会社であるがサービスは全世界に展開しており、日本のMeetupグループも多く存在する。

□Eventbrite

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USA
創業 2006
従業員 100
ユニークビジター 1681362
ユニークビジター増加率 65%
投資状況 2011/05 : $50M(Series E)
投資合計額 $79.6M
トの販売サイトという意味では、恐らく一番ユーザを集めているサイトである。

Eventbriteは、その1で説明した通り、イベント主催者が「イベントを登録、チケットを発行」し、そのイベントに参加したいユーザが「イベントを検索、チケットを購入」できるサイトである。

収益モデルは、チケット購入時に手数料として販売代金の2.5%+$0.99(1チケット$9.95を超える場合は$9.95)をEventbriteが受け取る。

Eventbriteは、ユニークユーザ数を今年大きく伸ばし(+65%)、去年イベントチケット販売という意味では1位だったEventfulを抜いた。

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このEventbriteの好調さの原因はFacebookとの連携にあるのかもしれない。2010/10のTechCrunchの記事によると、Eventbriteは、この1年間でFacebookとの連携を大きく強化した。FacebookのIDでEventbriteにログインすると、Eventbrite上でFacebookの友達が行く全てのイベントが一覧で見れる。また、友達がイベントチケットを買ったり選んだ事に対するコメントやリコメンデーションがFacebookを介して広がるようになっている。これのことをEventbriteは「イベントグラフ」と呼ぶそうだ。

このように、SNSとの連携は、イベントチケットの販売という市場においても重要なポイントなのかもしれない。

□eventful

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USA
創業 2004/01
従業員 35
ユニークビジター 1434592
ユニークビジター増加率 -32%
投資状況 2008/10 : $10M(Series C)
投資合計額 $19.6M

eventfulは、イベントチケット販売サービスではあるが、上記のEventbriteやMeetupとは少し方向性が違うように見える。トップサイトには、有名人(だと思う。。)のコンサートや企業が主催するような大規模イベントが並んでおり、個人が少人数でやります的なイベントは見つけられない。eventfulは、どちらかというとZeventsや日本でいうチケットぴあとかみたいなプロの大規模イベントのチケットを買うサイトというサービスを中心としてるようだ。

ただし、個人がイベントを作成し、募集する機能もあり、実際少人数のワインテイスティングクラスみたいなのもあるので、今回調べている市場のプレイヤーでもあることは間違いない。

eventfulは、昨年に比べ-32%ほどUVを落としている。

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□punchbowl

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USA
創業 2007/01
従業員 ?
ユニークビジター 997103
ユニークビジター増加率 194%
投資状況 2011/09 : $580k(Unattributed)
投資合計額 $2.68M

punchbowlは、パーティーに特化したサービスで、パーティーの準備から終了までの全てを面倒見てくれるサービスである。

例えばメールで送るオンライン招待状は、様々なデザインで封筒に入った形で送信される。

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パーティーの日時を決めるために参加者の空いてる日を集め候補となる日時を自動的にリストしてくれる機能もある。そのパーティー専用のメッセージボードがあったり、パーティーを楽しくできるような様々なTipsも参照できる。DJやイベントプランナーなどプロが必要とあらば自分の地域のベンダー一覧を検索することもできる。

イベントを単純に管理するだけでなくこういったパーティーに特化した機能をフルで持っているところが恐らく人気があがっているポイントなのだろう。日本ではパーティーの風習がないので同じサービスは成立しないと思うが、同じイベント管理サービスでも何かに特化することでさらに市場をセグメント化できるということをこのサービスは教えてくれる。

月間UVを見てみる。puchbowlは、4強の中で今年最もUVを伸ばしたサービス(+194%)である。

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創業が2007年と若いサービスであり、これからも伸びていくサービスなのだと思われる。


□最後に

実はこの市場のプレイヤーとしてここまで出さなかったが、圧倒的な競合が1つ存在している。Facebookである。

Facebookは、イベント告知機能をもっており、イベント主催者がイベント内容を登録すると、指定した範囲(全ての人が見れるか、友達のみ見れるか)でイベントが告知・募集される。出欠の管理も可能だ。今のところ、決済機能は持っていないのとイベントを検索しやすいUIにはなっていないため上記に紹介したサービスが食われることはない。とはいえ、決済機能が実装されたりするとこの市場をガラッと変えてしまうような威力はあると思う。

ベンチャーってのは常にこういうでかいとこに食われる危険性と隣り合わせなんだなと思う今日このごろでした。

■参考

http://asusync.air-nifty.com/blog/2011/12/meetupceo-2-mee.html http://techcrunch.com/2010/09/23/eventbrite-facebook/

2011年12月24日土曜日

このベンチャー市場が熱い「イベントチケット販売サービス市場」その2

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■市場規模と成長性

イベントチケット販売サービス市場は2003年頃からあり、英語圏では多くのサービスが乱立している。日本でも複数のサービスがしのぎを削っている状況だ。この市場のサービスとして英語圏サービスを23社、日本のサービス6社を調べた(*1)。

まず英語圏の市場を見てみる。2011年11月のユニークビジター数の全サービス合計は701万だった。仮にこれらのサービスの売上がチケットの販売手数料のみとし、1ヶ月にユーザのうち3人に1人が3000円のチケットを1枚買うとしよう。「ベンチャー市場調査「イベントチケット販売サービス市場」その1」で書いたように手数料は販売額の2.5%+$0.09とすると、21億円の市場規模ということになる。

また、前年度に比べてユニークビジター数は12%増加している。つまり毎年2.5億円ずつ市場が大きくなっているということ。感覚的にもやっとこのサービスが周りに認知されてきて、これからさらにユーザが増えるという印象だったので、こんなもんかなと思う。

もちろん大企業にはとても採算の合わない市場ではあるが市場の1/5でも取れば4億円の売上で恐らく3億くらいの収益が出て毎年0.5億円ずつ売上が増えていくと考えればベンチャーにとってはいい市場だと思う。

次に日本の市場を見てみる。日本は、基本アメリカの後追いなので数年遅れて今まさにサービスが続々と増えている状況だ。

6社の合計ユニークビジター数は、23万。7000万円の市場規模という計算になる。日本市場のサービスは、前年度のデータが取れないため成長率は計算できなかった。とはいえ、アメリカで爆発したサービスがちょうど今から日本でもという時期なのでアメリカ市場の成長率よりは高いと予想される。

■デモグラフィクス

次に、英語圏のユーザについて、その特色を見てみたい。下記のグラフは、それぞれユーザの「年齢」「教育」「性別」「子供の有無」「場所」に関して、平均的なインターネットユーザと比べた偏り具合を表している。グラフが左側に伸びているのは、その項目が平均的なインターネットユーザと比べてイベントチケット販売サービスを使うユーザには少ないということだ。逆にグラフが右側に伸びているのは、その項目が平均的なインターネットユーザと比べてイベントチケット販売サービスを使うユーザには多いということを表す。

まず、年齢は、25〜44歳くらいが特に良く使うサービスであることがわかる。逆に18~24歳のユーザが特に少ないことは、イベントの内容が「若めの社会人」を対象にしたものが多いことを暗示している。具体的にイベントの内容をぱらぱらと見ても、例えばビジネスセミナーだったり、高級ホテルでパーティーだったりと大人向けのイベントが多いことは間違いない。まあまあ予想通りだ。かなり予想外なのは、女性ユーザの比率がかなり多いことだ。実はイベントやセミナーに参加したいという動機を持つのは女性のほうが多いということだろうか。

アクセスする場所として仕事場が圧倒的に多いというのは、なんというかお前ら仕事しろと。。。

次に日本のユーザについて同様に特色を見ていく。

特徴的なのは、英語圏サービスが女性ユーザの比率が高かったのに対し、日本では男性の比率が高いこと。想像になってしまうが、思うにスタートアップ企業の最初のユーザは、どうしてもスタートアップ界隈の人になってしまうため比率的に男性が多く使うことになり、それがやがて一般の人に認知されて行く中で女性中心のセミナーやパーティー的なイベントが多く登録されるのではないかと。

なので逆説的になるが、この市場のスタートアップが次のステージに行くにはいかに女性向けのイベントを増やしていくかがカギになるだろうし、そういうイベント好きな女性が好んで使ってくれるようなサービスにしていく必要があるのだと思う。

<その3へ続く>

■参照

*1 調べた会社は次の通り。

rsvpbook, tweetvite, Eventbee, eventsbot, Eventful, Center'd, amiando, TicketLeap, Acteva, Ticketfly, ticketscript, EventElephant, Partytell, RegOnline, Zoji, Digitick, Mobaganda, eventbrite, meetup, 123signups, ticket-text, mypunchbowl, hotlist, ATND, こくちーず, Partake, Peatix, Twipla, Everevo

なお競合情報は、VentureBeat(http://venturebeatprofiles.com/)より取得した。また、デモグラフィクス情報は、Compete.com, Google DoubleClick Ad Plannerより取得した。

このベンチャー市場が熱い「イベントチケット販売サービス市場」その1

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イベントチケット販売サービスの1つPeaTixが12/15に日本からシリコンバレーに拠点を移すと共に70万ドルの資金調達をしたとのこと。この市場、スタートアップがターゲットとする市場のなかでもホットな市場の1つだと思う。この市場とサービスをまとめてみたい。

■イベントチケット販売サービスとは?

イベントチケット販売サービスとは、ウェブ上で自由にイベントの開催を告知し、イベントチケットの販売や参加者の管理ができるサービスを指す。

個人でイベントを開くとき、どこで告知、募集を行うべきか?ビラ配りや広告を出したりといったことも考えられるが、できれば無料で簡単に告知、募集ができるインターネットを使いたい。インターネットの人が集まる場所というと、人通りの多い掲示板やFacebook, TwitterなどのSNSになる。

ところが、イベントが有料だとした場合、お金の徴収の仕方が問題となる。現地で大金を集めるのはできればやりたくない。またドタキャンでお金を払わないというのは困るというイベントもある。事前にお金を払える仕組みがあればイベント主催者は助かる。

また、イベントには会場の都合上定員があることも多い。どうやって定員を管理すればよいだろうか。掲示板やSNSでは難しい。出席者の管理や出席キャンセルなどの管理を簡単にできるとやはりイベント主催者は助かる。

これらイベントの募集、イベント料の集金、イベント出席者の管理等を行ってくれるサービスがイベントチケット販売サービスなのである。

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ユーザがどのようにサービスを使うのかeventbriteというイベントチケット販売サービスを例にとり、見ていく。

参加者は、ユーザ登録をした後、自分の参加したいイベントを検索する。検索条件として日付やイベント料、場所、カテゴリなどで絞ることができる。

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参加者は、お好みのイベントを見つけると、次はそのイベントチケットを購入する手続きに移る。

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eventbriteの場合、PayPalから各種クレジットカードまで色々な決済方法が選べる。チケット購入が完了すれば、あとは当日イベントにいくだけということになる。購入チケットは自分のページで一覧が見れるほか、キャンセル等もできることが多い。

次に、イベント主催者側である。

イベント主催者側は、イベント情報を登録するところから始まる。イベント情報の登録は画面上で簡単に作成できる。

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イベント作成、チケット発行したらあとは、人が来るのを待つだけである。どれくらいチケットが購入されたかの情報は管理画面で確認できる。

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ほとんどのイベントチケット販売サービスが、ユーザ登録/イベントの登録を無料としている。彼らの収益は、イベントチケットが購入された際生じる販売手数料である。eventbriteの場合、販売代金の2.5%+$0.99となっている(1チケット$9.95を超える場合は$9.95)。また参加者が選ぶ決済方法によってその手数料が販売手数料に加えて必要となる(クレジット決済は3%, PayPalは2.9%等)。

<その2へ続く>

 

2011年12月23日金曜日

「企業のクラウドサービス管理サービス」cloudability

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■どういった問題を解決しようとしているのか

ここ数年企業は、システムを自社で持つ事からクラウド上に持つ方向へ変わりつつある。クラウドサービスの最大のメリットは、従来の最初にドカンとお金を払う自社サーバに比べて、従量課金で使った分だけ毎月払うことによる初期費用の安さと負荷状況によりサーバ構成を変更できる柔軟性にある。

クラウドで使えるサービスは、今や多岐に渡るが、多くのサービスを使う企業の場合、管理が大変である。これはクラウドが毎月使った分だけ支払う従量課金のためそれぞれについて常に監視しておく必要があるからだ。例えば、ビデオストリーミングサービスなどは、スパム目的のユーザが大容量のデータをサーバにアップロードすることがあり、知らない間にびっくりする額の請求書が来てしまう事がある。

とはいえ、それぞれのクラウドサービスの管理画面はそれぞれ別々に存在し、それらをいちいち監視するのは手間がかかる。

自社で使う多くのサービスをまとめて管理でき、過剰な使われ方をした場合に警告を出してくれるようなサービスが求められている。

■どのようなサービスなのか

Cloudabilityは、自社で使うクラウドサービスをまとめて一括管理できるサービスである。Cloudabilityを使うと自社のクラウドサービスをウェブ画面で一覧化でき、それぞれの現在の費用がわかる。また、クラウドサービスの使い方に無駄がないかアドバイスをくれる。また、過剰な使われ方をした場合、メール等で警告を知らせる機能も持っている。

料金は、登録したクラウドサービスの使用料金が合計2500ドルまでは無料、そこから10000ドルまでで月49ドル、25000ドルまでで月149ドル、50000ドルまでで月299ドルとなっている。

■現在の状況

2011年11月にβ版がリリースされ、1078のアクティブユーザが計2100万ドルのクラウドサービス使用料を管理している。2011年12月に110万ドルのシードマネーを調達。従業員は現在4人。

■参考

https://www.cloudability.com/

http://venturebeat.com/2011/12/22/cloudability-raises-1m/?utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed%3A+Venturebeat+%28VentureBeat%29

2011年12月19日月曜日

「深刻な病気に悩む人々のSNSコミュニティサービス」をまとめる

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■どういった問題を解決しようとしているのか

「自閉症の子を持つ親のSNS」myautismteamで紹介したように深刻な病気や慢性的な持病を持つ人々にとって、同じ境遇の人との繋がることによって得られる心の安定や様々な情報収集は非常に重要な意味を持つ。Facebookやmixi等の大手SNSであっても人との関係を得ることはできるが、同じ目的を持って集まるコミュニティサイトのほうがより効率的に上記の目的を達成できることは容易に想像できる。

病気を持つ人々は例えば以下のようなニーズを持っている。

・かかりつけの医者以外の意見(セカンドオピニオン)を利害関係のない人から聞きたい
・病気を治すもしくは、症状を緩和するための日常的な生活上の工夫等、細かな情報を広く集めたい
・同じ悩みを持つもの同士がお互い励まし合うコミュニティが欲しい
・自分の住む地域での専門医を見つけたい

■どのようなサービスなのか

深刻な病気や慢性的な持病を持つ人々のコミュニティの場を提供するサービスをまとめる。美容や整形、ダイエットといった病気ではない(肥満は病気かな?)ものをターゲットとしたサービスは除いた。

これらのサービスの特長は、まずユーザの年齢層が35~44歳と45~54歳で7割以上を占めることである。インターネットの主要ユーザは25~44歳なのでユーザ層が高齢に偏っている傾向にあり、40代になり様々な持病に悩まされる年頃でインターネットに慣れ親しんでいるユーザが使っていると思われる。より病気に悩まされる人々が多いと思われる55歳以上のユーザが少ないのはインターネットを使う人が少ないからだろうが、今後増えていくことは間違いない。

また、特徴的なのはアメリカのどのサービスも例外なく女性ユーザの比率が男性ユーザの2倍程度あることだ。女性の方が男性より2倍病気になりやすいわけはないので、恐らく人と自分の状況を共有したいという気持ちが女性に強いのではないかと個人的には思っている。

どのサービスにもある機能としては、

・各病気ごとのディスカッションフォーラム
・各病気に関する情報ページや専門家のオピニオン紹介
・友達登録もしくは友達をフォローするといったSNS機能
・メッセージ機能。メールアドレスを晒さずに友達とのコミュニケーションを取るために使用する。

などがある。 さらにユーザが日記をつけられる機能や、自分の体調を記録しグラフ表示したりするオンラインツールを提供するサイトも存在する。

先進国は、今後少子高齢化に入る国が多い。また、インターネットに慣れ親しんだ人々が今後高齢者層にも増えてくるため、この市場は今後大きく成長すると考えられる。

■マネタイズの方法

基本、病気を持つユーザに提供されるサービスは全て無料である。

なので、ユーザ以外から利益を上げないといけないのだが、まず考えられるのが広告収入。患者という明確なプロフィールの人のみが集まるため効率性の高い広告が作れると思われる。

また、例えば以前紹介した治験のためのユーザセレクションに必要な情報を提供するといったユーザ情報を病院や研究機関に提供して収益を出すのかもしれない。

■日本市場でのサービス

これから紹介するが、英語圏ではこの市場には多くのサイトが乱立している。これはこの分野のニーズの多さを示しているが、日本ではまだ少ない。

英語圏の人口は現在3億8000万人と言われている。日本は1億3000万人なのでこの1/3と考えてよい(日本が少子高齢化していることを考えるともっと大きいかも)。従って単純に考えれば英語サービスのユーザの1/3程度のユーザを持つサービスがあってもおかしくないはずだが、調べた限り、LifePaletteでUUが27000人と1/40レベルにとどまっている。

LifePaletteはサービスがローンチしてから1年程度と若いためこれから伸びるサービスなはずだが、参入機会はまだあると考えられる。

■各サービスの特長

紹介するサービスの一覧は以下。

CarePages

Daily Strength

MDJunction

revolutionhealth

patientslikeme

LifePalette

では、早速紹介。
なお、以下に出てくる統計データはGoogle doubleclick adplannerより取得している。

CarePages

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CarePagesは、ブログ作って他の人と情報を共有するサイトである。

ユーザは必ず自分のサイトをCarePages上に持ち、日々思った事等を記録する。このブログはアクセスコントロールを指定でき、自分と自分が許可した人しか見れないようにすることもできるし、CarePages上の友達にしか見れないようにすることもできる。掲示板や情報記事等もあるが、基本は、病気を持つ人同士がブログで交流するサイトのようだ。

また、友達にギフトを贈るというサービスがあり、商品を選んでamazonからギフトを贈ることができる。ここでマネタイズしようとしてるのかな。

Daily Strength

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ヘルスケア系情報サイトでは最大手の1つ。サポートする病気は非常に多く、1つ1つのサポートグループのユーザ数も多い(例えば糖尿病はtyp1, typ2合わせて4296人登録がある)。

機能としては掲示板の他、自分のブログを書ける機能、友達登録、メッセージ機能、フォトアルバム機能などがある。

Expert Answersと言う、専門家に対し質問ができるサービスがあり、セカンドオピニオンを得たい場合はなど役に立つ。医者としても自分の活動や宣伝をする機会となるため質問に対してはほとんど医者のレスがついている。

なお本サービスはFacebookでの認証ができる。この手のサービスにFacebook認証が少ないのは、やはり高齢層を意識してるからかな?

MDJunction

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ヘルスケア系の大手コミュニティサイト。サポートグループの種類は、糖尿病からガン、心臓病、虫歯に至るまで多岐に渡る。

サポートグループの中での活動は、掲示板での情報共有やその病気に関連する論文や記事、動画の紹介の他にユーザ自身が日記を付けそれをきっかけにユーザ同士が交流する仕組みも持っている。

また、地域ごとの医者の検索や健康保険の紹介といったコーナーもある。どのようなビジネスモデルなどは調べてないから想像だけど、この健康保険の広告料や医者の紹介料で運営しているんだと思う。

revolutionhealth

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健康と薬の総合情報サイト。100を超える健康に関するオンラインツールを提供しているのが特長。例えば、下記は血圧を毎日記録してグラフ化できるツール。

こういったツールは、世の中にいっぱいあるけど、ヘルスケア情報やSNSと一緒の場所にあって融合しているところがポイントだと思う。このツールで出るグラフ結果とかをコミュニティ上の医者と共有できるというのは素晴らしいサービスじゃないかな。

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patientslikeme

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「私と同じような病気で悩む人と繋がる」ことをコンセプトにしたサービス。

ユーザ登録時に本サービスを使ってる人全体の統計を表示してくれるのだが、40代50代が多く、なんと70代以上も2000人以上登録者がいることがわかった。どうしても必要なサービスというのはインターネットが得意不得意にかかわらず、使ってもらえることがわかる。

他のサービスと同じように毎日日記を書くような機能があるが、登録方法は「その日気分は?Very good, good, netral, bad ,very bad」を選び、「なぜその気分?」を記述するという形式。

また、自分の今日の状態をかなり詳しく設定でき、それが他のユーザに公開されるため、自分の今の体の状態とまさに同じような人を探すこともできる。

自分の状態は下記のように選択形式で選べて簡単に設定可能。

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当然他のサイトと同じくフォーラムやメッセージ機能なども備わっている。

LifePalette

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ガン患者とその家族を対象としたSNS。

ダイアリーや病気体験記を書き、それらを通して他のユーザと繋がるサービスである。

また、病気についての情報ページやQ&Aの掲示板もある。Q&Aは専門医などプロフェッショナルが積極的に答えるというよりかは患者同士お互いわかることを共有しましょうという形のようだ。

他のサービスにない特長としては病気体験記という自分の体験記を書ける点。ひとつの本のようになっていて、ビジュアル的にもいい感じのサービスである。

別サービスのPalette Shopにリンクがあり、病気に関連する商品を買う事ができる。